武漢ウイルスによって経済への打撃が起こっている。武漢熱自体が大したことがない、騒ぎすぎ、自粛しすぎだ、経済自体は悪くないのに株価が落ちているのは変だ、という意見もある。しかし実際、経済活動は大幅に制限されているので、やはり経済は大幅に落ち込む。リーマンショックの時はとにかく経済活動をストップさせられることはなかった。今は、政府が人の流れを制限するし、人々も外出とか控える。生産活動も消費も落ち込む。ここの店員がウイルス検査で陽性が出たからしばらく閉店するとか。店ならまだいいが、工場みたいなサプライチェーンが休むと他の生産活動にも支障が出てくる。あそこの工場の製品がないとうちの工場で製品が作れない、みたいな。それが国内で起きているならまだ色々できる余地もあるが、外国の工場が止まってるってなるとどうしょうもなかったりする。
人類社会は絶えず疫病と戦い続けてきた歴史がある。それは医学の分野では非常に発展してきた。では経済を中心とする社会ではどうかというと、いまいち心もとない。少なくとも経済問題への対処ほど洗練された手法は持っていないと思う。しかし今回の問題を疫病問題としてでなく、経済危機の問題として経済政策で対処するような知恵は今の人類は持っている。それなので2008年のリーマンショックの時も、100年に一度の大事件と言われた時も、中央銀行が最後の貸し手となって潤沢な資金を提供し、金利も下げ、政府も大胆な財政政策をし、そういう経済学的な知恵が十分になかった50年前、100年前に比べて傷は浅く済んだ。今回はどうか?
経済活動の一部が停滞を余儀なくされ、産業によっては、あるいは国によって、そしてもともと問題がある企業などは壊滅的な打撃を受けている。いずれこのウイルス騒ぎも収束し、正常な経済活動に戻れる日が必ず来るのだが、それまでもたずに倒産するかもしれない企業も出てくる。だから、正常に戻れるまで、資金繰りができずに倒産してしまう企業には政府がなんとかする。観光産業とか外食産業みたいな特にダメージが大きい産業にも大きな需要を作ってリカバーさせる必要がある。そのためには、国民に消費してもらうために大規模な財政出動をすべきである。アメリカは3月17日、なんと1兆ドルの経済刺激策をするという。107兆円、日本のGDPの5分の1だ。アメリカのGDPは20兆ドル弱なのでGDPの5%。日本で5%といったら25兆円規模の財政出動ということだ。たしか自民党の山田宏が国民1人に10万円の期限付き購買券を配るという提案をしたというが、これだと12兆円ぐらいなので、まだまだ弱いと思う。アメリカは小切手を国民に配るというが、日本みたいに市場にカネが回らずに貯蓄がどんどん増える傾向にある国では効果がそがれるので、現金ではなく期限付き購買券がいいが、但し、スーパーみたいにダメージが少ないところで使える商品券ではなく、観光業、外食産業、娯楽産業みたいな、今回のウイルス騒ぎでダメージが大きかった産業に限定された形の期限付き購買券が良いと思う。あるいは、今回の騒ぎで失業して生活必需品を買うカネにも困ってるという人のために、もっとキメ細かく色んな種類の購買券を考えるべきかもしれないが、いずれにしても期限付きがいいと思う。ウイルス騒ぎの収束時期に合わせてそれを出す。その時期がオリンピックに重なれば、快気祝いみたいにオリンピック自体もお祭りの場として盛り上がるのではないか。
ただ難しいのは、国の経済政策は国単位であって、今のようにサプライチェーンや観光業など、グローバルにつながっているものに対しては無力なのが今後の世界経済、ひいては世界社会の課題となろう。こういう危機の時、GDPの5%という破格の経済刺激策が打てる余力のある国は、この荒波を乗り越えられるだろう。しかし世界にはそれができない国が非常に多い。レバノンがデフォルトを起こしたと先日聞いた。原油価格が暴落しているので、ロシアや中東の産油国も大変厳しいだろう。世界はリスクオフなので資金もレパトリで祖国に帰るので、もともと弱い国はカネ不足が起こる。ウォンを最近見ていないが、大変でないわけはないだろう。中国も、もともと土地バブルが弾けてヤバイところへ米中貿易戦争が起こって泣きっ面に蜂だったのが、さらに今回のウイルス騒ぎだ。もっともこれは自業自得で、は中国はまず第一に、世界をこれだけ混乱させたウイルスを世界に蔓延させた加害者であることは強調されなければならないが、それにしてももともとヤバかった経済がこれでさらにヤバくなってることは事実だろう。今回の世界的な大騒動で、アメリカや日本、欧州など強く豊かな国も非常に苦労しているが、もっと大変なのは、そういう国々の繁栄のおこぼれでやってきていた貧しい国々は、これまで援助してくれたそういう豊かな国々がいっぱいいっぱいになってとても周辺の弱小国の世話までできない状態になっているので、そのままデフォルトを起こしまくったりしてすごいことになるだろう。これも、豊かな国の特定産業だったら、政府の庇護を受けることができるが、国自体が困ってるところでは、レバノンみたいにデフォルトを起こすしかなくなってくる。そして、そういう国でも、世界のグローバルサプライチェーンの一翼を担っているところがあったら、豊かな国もそれによって打撃を受ける。しかも、経済政策はその国の中だけのことで、外国を援助することに、納税者の納得は普通得られない。そのあたりをどうするか、ということは今後の人類の課題になるだろう。グローバルサプライチェーンを担う貧しい国は、経済危機の時に、国際社会からの支援を得られる。今でもIMFがあり、彼らは援助する代わりにその国の主権を制限して大胆な外科手術的改革を行う。こういう機能がますます求められることになるだろう。こういう時に、たとえば中国は、借金漬け外交と呼ばれるような政策をやってスリランカなどを半植民地化したりしている。そういうものは国際社会で許されるべきではないので、貧しい国を助けるためにも何らかの国際ルールがあってしかるべきである。それらはまだ整備されているとはとうてい言えない。
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