2021年6月11日金曜日

友情ワクチン

 読売新聞の報道によると、今年5月下旬、台湾の蔡英文総統から安倍前首相に、「何とか6月中旬までにワクチンを届けてもらえないでしょうか」とSOSの電話があった。

 台湾は新型コロナウイルスの感染封じ込めに成功し「世界の模範」とされていたが、5月に感染者が急増。台湾総統府はワクチン確保を急いだが、独ビオンテック製ワクチンの契約が、「中国の介入で合意できない」(蔡)事態に陥った。そこで台湾は日本に働きかけを行った。

 日本は米ファイザーや米モデルナのワクチンを既に確保済みで、アストラゼネカ製で接種後ごくまれに血栓が生じる例が海外で報告されていたこともあり、日本国内の使い道が未定だったことから、台湾はそのぶんを提供してほしいと打診。

 茂木外相は、ワクチン提供は台湾からの依頼に基づくと説明。「東日本大震災の際、いち早く義援金を送ってくれた。そうした台湾との友情を踏まえた」と述べた。6月4日、日本から台湾に124万回ぶんのワクチンが無償提供された。


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 日本はかつてアジアのパートナーとして韓国を想定することが多く、関係改善の努力をしてきたが、2017年5月ムンジェイン大統領就任以降、慰安婦問題や徴用工問題で同政権が国際法違反的行動をとるにつれ、日韓関係は急速に冷え込み、一方でトランプ政権下で米中冷戦が始まり、中国を牽制する意味で台湾の重要性が増し、日本と台湾が近づく契機が増えた。この4年間で日韓関係の修復が絶望的に冷え込む一方で、今回の友情ワクチンが象徴するように日台関係が大幅に改善されている。今や日本はアジアのパートナーとして韓国にかわって台湾を想定するに至っている。かつてミャンマーとの関係構築という話もあったが現在、ミャンマーはクーデターの混乱のさなかにあり、背後に中国政府の影も見え隠れする。米中冷戦が続く間、日韓離反と日台友好の方向性が続く可能性が強い。


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